和歌と俳句

如月 きさらぎ

茂吉
きさらぎの天つひかりに飛行船ニコライ寺のうへを走れり

茂吉
きさらぎの三月にむかふ空きよし銀座つむじに塵たちのぼる

茂吉
つくづくと憂にこもる人あらむこのきさらぎの白梅の花

茂吉
きさらぎの雪消の泥のただよへる街の十字に人つどひけり

憲吉
きさらぎの筑紫の濱の松ばらに松葉ちる音をききて死にけむ

牧水
梅の花はつはつ咲けるきさらぎはものぞおちゐぬわれのこころに

牧水
梅の花褪せつつ咲きてきさらぎはゆめのごとくになか過ぎにけり

千樫
移るべき家をもとめてきさらぎの埃あみつつ妻とあゆめり

千樫
きさらぎのあかるき街をならび行き老いづく妻を見るがかなしき

如月の日向をありく教師哉 普羅

如月や鶺鴒翻へる防波堤 普羅

きさらぎの藪にひびける早瀬かな 草城

きさらぎや小夜のくだちのマンドリン 草城

二月や藁ほどけたる大蘇鉄 石鼎

二月や峰争うて雲の下 石鼎

二月や鹿よごれたつ水のはた 石鼎

牧水
しみじみと けふ降る雨は きさらぎの 春のはじめの 雨にあらずや

牧水
窓さきの 暗くなりたる きさらぎの 強降雨を 見てなまけをり

牧水
きさらぎは 春のはじめは 年ごとに われのこころの さびしかる月

如月の烈風釘を打つ音す 亞浪

如月や障子の外の楠落葉 石鼎

憲吉
みちのべの枯桑畑は靄へどもなほ如月のさむき月かげ

牧水
枯草の匂いよいよかぐはしききさらぎの野となりにけるかな