和歌と俳句

蒲公英 たんぽぽ

たんぽぽや折々さます蝶の夢 千代女

打すてて誰がぬしなるぞつづみ草 千代女

たんぽゝもけふ白頭に暮の春 召波

たんぽぽに東近江の日和かな 白雄

たんぽゝや五柳親父がしたし物 几董

蒲公英に飛くらしたる小川哉 一茶


春老てたんぽぽの花咲けば散る 子規

犬去つてむつくと起る蒲公英が 漱石


鋸の 齒なす諸葉の 眞中ゆも つら抽きたてる たむぽゝの花

茂吉
いとけなき 心葬りの かなしさに 蒲公英を掘る さとの岡べに

茂吉
仄かにも 吾に親しき 豫言を いはまくすらしき 黄いろ玉はな

白秋
廃れたる 園に踏み入り たんぽぽの 白きを踏めば 春たけにける

白秋
いつしかに 春の名残に なりにけり 昆布干場の たんぽぽの花

白秋
寝てよめば 黄なる粉つく 小さき字の ロチイなつかし たんぽぽの花

白秋
ふはふはと たんぽぽの飛び あかあかと 夕日の光り 人の歩める

蒲公英や炊ぎ濯ぎも湖水まで 蛇笏

牧水
かたすみの 杉の木立の うす赤み 枯草原に たんぽぽの萌ゆ

蒲公英の毛花吹くほどの風に立つ 亞浪

白秋
朝ひらく 黄のたんぽぽの 露けさよ 口寄する馬の 叱られてゆきぬ

乳吐いてたんぽぽの茎折れにけり 犀星

たんぽぽの灰あびしまま咲きにけり 犀星

行く春や蒲公英ひとり日に驕る 犀星

蒲公英や激浪寄せて防波堤 秋櫻子