和歌と俳句

小林一茶

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

人よりも朝きげん也かへる鴈

きのふ寝しさが山見へて春の雨

蒲公英に飛くらしたる小川哉

木曾山はうしろになりぬ鳴雲雀

油火のうつくしき夜やなく

こつこつとひと行過て花のちる

葭簀あむ槌にもなれし小てふ

春の日や水さへあれば暮残り

野大根も花咲にけり鳴雲雀

奈良漬を丸でかぢりて花の陰

霞み行や二親持し小すげ笠

地車におつぴしがれし

福蟾ものさばり出たり桃花

親里へ水は流るる春辺哉

一日も我家ほしさよ梅花

咲や去年は越後のあぶれ人

来るも来るも下手 よ窓の梅

春立つや四十三年人の飯

梅がかやおろしやを這はす御代にあふ

髪虱ひねる戸口も春野哉

梅がかやどなたが来ても欠茶碗

わがやタドン一ツに小菜一把

牛の子の皃をつん出す 椿

さし柳翌は出て行庵哉

陽炎や笠の手垢も春のさま