和歌と俳句

正岡子規

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面白や馬刀の居る穴居らぬ穴

名所に住むやさく只の家

紅梅の隣もちけり草の庵

辻まちの車の上に

菅笠やはらりとかかる柳哉

草臥てよし足引の山櫻

伽羅くさき風が吹く也

三井寺をのぼるともしや夕櫻

遅桜静かに詠められにけり

十三の年より咲て姥桜

釣鐘の寄進出来たり花盛

櫻狩上野王子は山つづき

すさましや花見戻りの下駄の音

初旅や木瓜もうれしき物の数

一籠の蜆にまじる根芹

蕗の薹福寿草にも似たりけり

苗代のへりをつたふて目高哉

すみきるや苗代水の上流れ

垣ごしに菊の根わけてもらひ鳬

萍や池の真中に生ひ初る

春老てたんぽぽの花咲けば散る

山陰に虎杖森のごとくなり

風吹て山吹蝶をはね返し

菜の花の野末に低し天王寺

ふらふらと行けば菜の花はや見ゆる