子規
梅が枝に 始めてきなく 鶯の 春をしらする 法の一聲
鶯の聲の細さよ岨五丈 子規
鶯や山をいづれば誕生寺 子規
一葉
うれしくもわがものにして聞てけりこのあかつきの鶯の声
鶯やみあかしのこる杉の杜 子規
一葉
鶯のけさおとづるゝ声聞てはじめて春の心地こそすれ
鶯や畠つづきの寺の庭 子規
鶯の覚束なくも初音哉 子規
鶯や枯木の中の一軒家 子規
鶯や垣をへだてて君と我 子規
神殿や鶯走るとゆの中 子規
鶯や隣の娘何故のぞく 漱石
鶯や垣をへだてて君と我 子規
鶯のほうと許りで失せにけり 漱石
鶯や雨少し降りて衣紋坂 漱石
鶯や田圃の中の赤鳥居 漱石
鳴く事を鶯思ひ立つ日かな 漱石
台町や鶯真砂町にとぶ 碧梧桐
子規
雨になく庭の鶯そぼぬれた羽ばたきあへず枝移りする
子規
朝牀に手洗ひ居れば窓近く鶯鳴きて今日も晴なり
鶯や文字も知らずに歌心 虚子
子規
ともし火のもとに長ぶみ書き居れば鶯鳴きぬ夜や明けぬらん
晶子
ゆるされし 朝よそほひの しばらくを 君に歌へな 山の鶯
晶子
鶯は 君が夢よと もどきながら 緑のとばり そとかかげ見る
左千夫
松が枝にきゐる鶯おもしろく往かひするか鳴とはなしに
節
利根川を打ち越え來れば鳥網張る湖北村に鶯鳴くも
晶子
鶯は余寒のとばりあつう鎖し朝ぬる窓はよぎらぬ鳥か
城山の鶯来鳴く士族町 虚子
晶子
鳴滝や庭なめらかに椿ちる伯母の御寺のうぐひすのこゑ
千樫
にひばりの畑のそら豆はな咲きて楢山がくりうぐひす鳴くも
牧水
鴬の ふと啼きやめば ひとしきり 風わたるなり 青木が原を
対岸の模糊に鶯うつりけり 蛇笏
鶯の日毎巧みに日は延びぬ 漱石
晶子
むらさきの女松の上のあかつきのあかねの中にうぐひす飛びぬ
左千夫
幼げに声あどけなき鶯をうらなつかしみおりたちて聞く
左千夫
片町の掌なす我庭をあな怪しもや来鳴くうぐひす
左千夫
鶯や吾家を近く汝が声のうひうひしきに我れまけはてぬ
迢空
夕山路 こよひまろ寝むわがふしどの うさ思はする 鶯のこゑ
鶯や峡の戸なりし飛岩に 碧梧桐
鶯や人遠ければ窓に恋ふ 蛇笏
晶子
わが子等がおしろいをもて青桐の幹に字かけばうぐひすの啼く
晶子
下町の浪華役者のうはさなど人来てすればうぐひすの啼く
鶯や隣へ逃げる薮つづき 鬼城