和歌と俳句

鶯や根上り松に声高し 草田男

うぐいすや巌の眠りの真昼時 三鬼

鶯や山拓く火に昂りて 多佳子

鶯や礁へ落とす萱の径 風生

鶯やけさまだやまぬ雨の中 万太郎

鶯や書出しかけし二三行 万太郎

うぐいすや水を打擲する子等に 三鬼

鶯にくつくつ笑う泉あり 三鬼

うぐいすや引潮川の水速く 三鬼

鶯や母屋の客は甥と姪 立子

壽福寺の夕鶯のものさびし 立子

うぐひすや熱まだこもる登り窯 秋櫻子

鶯や一日掃除してをりし 立子

鶯や起きねばならぬ窓明り 立子

鶯やここに遺りて久能経 風生

鶯や静かにわが身振返る 立子

鶯や昼餉仕度は簡単に 立子

うぐひすや老ひしが多き開拓者 秋櫻子

うぐひすや掘られて樅の根は笑ふ 不死男

うぐひすや筆噛んで描く詫手紙 不死男

うぐひすや障子の影も胸張りて 秋櫻子

うぐひすや疾風のはしる海の色 秋櫻子

鶯や母をかたへにパン切れば 汀女

鶯や女の鍬の音は低く 林火

鶯や一人入りゆくたぶ樹叢 林火

うぐひすや景荒凉となるにつれ 悌二郎

うぐひすや夕ささなみを沼の冲 悌二郎

雨一過竹林深き初音かな 汀女

うぐひすや泪を拭ふ指拙に 不死男

うぐひすにダム一椀の水だまり 静塔

うぐひすや倒れる杉を森支ふ 静塔

いただきまで杉の持山鶯が 林火

鶯の籠りて山に雲湧かす 林火