和歌と俳句

秋元不死男

うぐひすや掘られて樅の根は笑ふ

偕老や雨を光らす崖すみれ

せせらぎや駈けだしさうに土筆生ふ

うぐひすや筆噛んで描く詫手紙

天使魚の悍の静止や西東忌

ちるさくら目抜通りに蛇の舌

母の忌の醒めて横寝の朝寝かな

青き踏み雲に曳かるる虚子忌かな

木の実置くてのひら母の日なりけり

こぼれ厳きつめたき石の椅子

雪解宿ハイハイと啼く九官鳥

初恋の猫鳴らす鈴乾きけり

母の忌の雲雀が啼けば肩おとす

ころがつて玉葱芽だす涅槃西風

鶏たちに疾風波うつ西東忌

鉛筆の短躯たまれり別れ霜

麦踏に檻あるごとし薄日さす

足袋のままけふ眠るなり雛祭

春日根づく屠殺の豚に背番号

悪声の白鳥春雲北へ飛ぶ

漁舟漕ぐ力瘤けふ卒業

蝌蚪の岸鞄が分銅の女子高生

白塗の浅き夢みしの昼

君らに風の強いスカート西東忌