和歌と俳句

星野立子

10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

あくびして肩こつてをり春炬燵

水草生ふ驚くばかり月日過ぐ

冴返り空高し月遠し星遠し

旅終わりつゝあり京の春の雨

誘ひあひ彼岸詣りの老姉妹

春風や人表より裏より来

たんぽぽや久方ぶりの雨が降る

私有地の立入禁止落椿

門を出てさすや春雨傘となる

美しく春の風吹く色に出で

や母屋の客は甥と姪

考のつまづき仰ぐ春の空

左手を春の火桶にあづけ読む

一歩ゆき一歩もどりて丁子の香

壽福寺夕鶯のものさびし

初蝶を見て来しことを言ひ忘れ

暖かやぬぎし草履のもえぎ色

人仰ぎ犬駈け過ぐる桃の花

春宵の人出ますます数寄屋橋

山腹に道あるらしや遍路ゆく

この門をくゞりし記憶春の雨

惜春や思ひ出の糸もつれ解け

初音きゝ十七日とメモしおく

や一日掃除してをりし

さうかとも思ふことあり水温む