あくびして肩こつてをり春炬燵
水草生ふ驚くばかり月日過ぐ
冴返り空高し月遠し星遠し
旅終わりつゝあり京の春の雨
誘ひあひ彼岸詣りの老姉妹
春風や人表より裏より来
たんぽぽや久方ぶりの雨が降る
私有地の立入禁止落椿
門を出てさすや春雨傘となる
美しく春の風吹く色に出で
鶯や母屋の客は甥と姪
考のつまづき仰ぐ春の空
左手を春の火桶にあづけ読む
一歩ゆき一歩もどりて丁子の香
初蝶を見て来しことを言ひ忘れ
暖かやぬぎし草履のもえぎ色
人仰ぎ犬駈け過ぐる桃の花
春宵の人出ますます数寄屋橋
山腹に道あるらしや遍路ゆく
この門をくゞりし記憶春の雨
惜春や思ひ出の糸もつれ解け
初音きゝ十七日とメモしおく
鶯や一日掃除してをりし
さうかとも思ふことあり水温む