本屏風人形屏風雛飾る
温泉けむりの軒這ひ春の山に消ゆ
暮遅し門燈をつけポストを見
一山に一瀑蔵し惜春譜
本宮へ行く道とあり遅櫻
リラ咲くと書きなつかしき昔かな
富士を背に富士を真向きに茶を摘めり
チューリップ畑白一列赤一列
うらうらと今日美しき虚子忌かな
代かはり時うつり花眺めをり
暖かに静かに話すことのあり
針供養へといそいそと一人行く
春の雪今本降りや美しや
春雷の大轟のただ一度
土を出て今日チューリップの芽となりぬ
宿をとる春の月夜の小豆島
老姉妹緋桃さかりの旅にあり
花暮るるこの空の色人の声
雑巾を濯ぎ暮春の主婦よ我
ありたけの春灯灯しうち眺め
うかれたる心も少し桜餅
次に著く駅は横浜春の雲
たんぽぽの皆上向きて正午なり
行く春の庭に熊手と草帚
花林檎一と昔否大昔