和歌と俳句

星野立子

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内よりも外が暖か梅の花

春めくと覚えつゝ読み耽るかな

ものゝ芽のこは真紫小紫

春眠のこの家つゝみし驟雨かな

鳶羽を収めて木の芽山に消ゆ

春めきし雪解の音に静心

牛鳴いてのどかなるかな花林檎

絵巻物拡げゆく如春の山

の笛を吹くごと鈴振るごと

小諸より見る浅間これ春立ちぬ

春泥に歩きなやめる遠会釈

頁繰る二月の季寄せ猫柳

残雪にごうごうと吹く風一ト日

下萌えぬ人間それに従ひぬ

下萌ゆる心を込めてかく手紙

一村や杏の花にうもれ住み

本尊は女雛におはす針供養

金色に涅槃し給ひ了んぬる

春愁を言葉のはしに捕へたり

蝌蚪生れて蝌蚪生れて旅つゞけゝり

張り合ひのある日なき日や草をつむ

松の色沈め沈めて花の山

雨ほつと折から野路のたんぽゝ

煙り散る松の花粉に気を転じ