内よりも外が暖か梅の花
春めくと覚えつゝ読み耽るかな
ものゝ芽のこは真紫小紫
春眠のこの家つゝみし驟雨かな
鳶羽を収めて木の芽山に消ゆ
春めきし雪解の音に静心
牛鳴いてのどかなるかな花林檎
絵巻物拡げゆく如春の山
囀の笛を吹くごと鈴振るごと
小諸より見る浅間これ春立ちぬ
春泥に歩きなやめる遠会釈
頁繰る二月の季寄せ猫柳
残雪にごうごうと吹く風一ト日
下萌えぬ人間それに従ひぬ
下萌ゆる心を込めてかく手紙
一村や杏の花にうもれ住み
本尊は女雛におはす針供養
金色に涅槃し給ひ了んぬる
春愁を言葉のはしに捕へたり
蝌蚪生れて蝌蚪生れて旅つゞけゝり
張り合ひのある日なき日や草をつむ
松の色沈め沈めて花の山
雨ほつと折から野路のたんぽゝ黄
煙り散る松の花粉に気を転じ