花咲きて中々低し梨の棚
遠くより山吹の雨よく見ゆる
春宵や風なくなりし田圃道
投げ捨てしすかんぽ麦にひつかかり
蝶々の羽を静めて降り来る
芽ぶきゐる木々の芽の名教へ教へられ
枝移りゆく四十雀木瓜紅し
夜風寒し雪解の戸樋の静まりぬ
大木の根本の草や春の園
昃れば春水の心あともどり
我針を納めて淋し針供養
乱雑に供養の針の堆く
次々と祠拝みて針納め
詣りたる人かへり行く芹の水
どの家も溝川べりや猫柳
葉の下に雪をかむらぬ玉椿
庭掃除して梅椿実朝忌
一どきに葉雫またも春の雨
芽柳を仰げば空のまぶしくて
子供等の登りくるらし春の山
うぐひすや寝起よき子とはなしゐる
しめりたる如き蘂はき落椿
我が影のうつるいとはし蝌蚪のひも
大風や昨日に変る庭の春
蕗の葉に花のうてなと春の蚊と