和歌と俳句

芹 せり

よそほひて来る村孃や芹の水 虚子

道の辺や羽子沈みゐる芹の水 風生

泥落ちてとけつつ沈む芹の水 虚子

かたまりて氷のひまの田芹かな 風生

芹すすぐ一枚岩のありにけり 久女

落ち込んで鼠の逃ぐる芹の水 虚子

芹の水まことに細く流れをり 青邨

芹つみに出しわが子等の窓に見ゆ 素十

錆泛けし水も芹生にせせらげる 悌二郎

笠もおちつかせて芹のうまさは 山頭火

詣りたる人かへり行く芹の水 立子

左右には芹の流れや化粧坂 たかし

せせらぎつ揺れつつ芹の生ひにけり たかし

芹洗ふ流れのなかが暖かし 汀女

芹摘みし籠のかたちを忘れたる 汀女

エプロンをして草摘みに溝の芹 立子

芹摘むや淋しけれどもたゞ一人 久女

芹・野川おどろきやすき蝶のゐて 楸邨

芹生ひて断雲青きところかな 楸邨

鯉の音かそけしセリの香に佇てば 信子

子ら芹をつかのま摘んでかへりゆく 占魚

降り行きて短かき芹を撫でにけり 耕衣

川芹の短かき事に世を忘る 耕衣

芹鳴るや饅頭四五個思い出づ 耕衣

雪の畦さらに細まり芹涵る 悌二郎

芹摘の来ては壊え畦なほ細る 悌二郎

芹を摘むこの旅もどる旅の料に 爽雨

瀬の石に洗ひのせつつ芹匂ふ 爽雨