木立ふかく椿落ちゐし落葉かな
バイブルをよむ寂しさよ花の雨
花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ
今掃きし土に苞ぬぐ木の芽かな
晴天に苞押しひらく木の芽かな
花ふかく躑躅見る歩を移しけり
青麦に降れよと思ふ地のかはき
月おそき畦おくられぬ花大根
活くるひま無き小繍毬や水瓶に
春蘭にくちづけ去りぬ人居ぬま
手より手にめで見る人形宵節句
ほほ笑めば簪のびらや雛の客
幕垂れて玉座くらさや雨の雛
函を出てより添ふ雛の御契り
古雛や花のみ衣の青丹美し
雛愛しわが黒髪をきりて植ゑ
古りつつも雛の眉引匂やかに
紙雛のおみな倒れておはしけり
雛市に見とれて母におくれがち
雛買うて疲れし母娘食堂へ
嚶珞揺れて雛顔暗し蔵座敷
雛の間や色紙張りまぜ広襖