和歌と俳句

杉田久女

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春雨や畳の上のかくれんぼ

菓子ねだる子に戯画かくや春の雨

歯茎かゆく乳首かむ子や花曇

嵐山の枯木もすでに花曇

春泥に柄浸けて散れる木の実赤

浮きつづく杭根の泡や水ぬるむ

ぬるむ水に棹張りしなふ濁りかな

土出でて歩む蟇見ぬ水ぬるむ

春著きるや裾踏み押へ腰細く

鬢かくや春眠さめし眉重く

風をいとひて鬢に傾げし春日傘

道のべの茶すこし摘みて袂かな

草摘む子幸あふれたる面かな

簷に吊る瓢の種も蒔かばやな

青き踏むや離心抱ける友のさま

姉ゐねばおとなしき子やしやぼん玉

ひとでふみ蟹とたはむれ磯あそび

押し習ふ卒業式の太鼓判

栴檀の花散る那覇へ入学す

入学児に鼻紙折りて持たせけり

燕来る軒の深さに棲みなれし

藪風に ただよへる虚空かな

蝶去るや葉とぢて眠るうまごやし

すこし飛びて又土にあり翅破れ蝶

旭注ぐや蝶に目覚めしうまごやし