和歌と俳句

杉田久女

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指輪ぬいて蜂の毒吸ふ朱唇かな

木立ふかく椿落ちゐし落葉かな

バイブルをよむ寂しさよ花の雨

花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ

今掃きし土に苞ぬぐ木の芽かな

晴天に苞押しひらく木の芽かな

花ふかく躑躅見る歩を移しけり

青麦に降れよと思ふ地のかはき

月おそき畦おくられぬ花大根

活くるひま無き小繍毬や水瓶に

春蘭にくちづけ去りぬ人居ぬま

手より手にめで見る人形宵節句

ほほ笑めば簪のびらやの客

幕垂れて玉座くらさや雨の

函を出てより添ふ雛の御契り

古雛や花のみ衣の青丹美し

雛愛しわが黒髪をきりて植ゑ

古りつつも雛の眉引匂やかに

紙雛のおみな倒れておはしけり

雛市に見とれて母におくれがち

雛買うて疲れし母娘食堂へ

嚶珞揺れて雛顔暗し蔵座敷

雛の間や色紙張りまぜ広襖