蕗の薹福寿草にも似たりけり 子規
蕗の薹二寸の天にたけにけり 鬼城
茂吉
日あたれば 根岸の里の 川べりの 青蕗のたう 揺りたつらむか
涙目に見ありく背戸や蕗の薹 石鼎
迢空
町なかの煤ふる庭は、ふきの薹たちよごれつつ 土からび居り
杣が瞳にくれてしまひぬ蕗の薹 石鼎
うす雪を透いてみどりや蕗の薹 石鼎
茂吉
たかむらのなかに秋田の蕗の薹ひとつは霜にいたみけるかも
枯笹や氷室すたれし蕗の薹 犀星
日だまりの茶の木のしげり蕗の薹 犀星
古垣の縄ほろと落つ蕗の薹 犀星
蕗の薹日にけに見ゆるほうけ立ち 悌二郎
つくばひに蕗の薹のせて忘れけり みどり女
大雪を掘りひろげ獲たり蕗の薹 石鼎
枯蓮に東風の漣かぎりなく 悌二郎
蕗の薹ふみてゆききや善き隣 久女
甦る春の地霊や蕗の薹 久女
蕗の薹の舌を逃げゆくにがさかな 虚子
蕗の薹高く茂れる苫屋かな 風生
道ばたの義経神社蕗の薹 風生
蕗の薹野川溢れて溺れをり 風生
蕗の薹木賊の中にほうけたり 風生
蕗の薹出て荒れにけり牡丹園 楸邨
ここにふきのとうひらいてゐる 山頭火
あるけばふきのとう 山頭火
ここにふきのとうがふたつ 山頭火
ここにふきのとうそこにふきのとう 山頭火
石垣の日向のふきのとうひらいてゐる 山頭火
蕗の薹おもひおもひの夕汽笛 汀女
雪国の春こそきつれ蕗の薹 麦南
方丈の縁に干しあり蕗の薹 鳳作
蕗のとう、あれから一年たちました 山頭火
蕗のとうのみどりもそへてひとりの食卓 山頭火
ほろにがさもふるさとでふきのとう 山頭火
藁塚のかげからもやつと蕗のとう 山頭火
いつも貧乏でふきのとうやたらに出てくる 山頭火
誰彼に無沙汰ばかりや蕗の薹 花蓑
蕗の薹とらず歩めり馴れのみち 貞
ほろ苦き恋の味なり蕗の薹 久女
蕗の薹摘み来し汝と争はず 久女
蕗の薹やまみづの湧くほとりかな 林火
移り来て蕗の薹のみ鮮しき 多佳子
蕗の薹つむりそろへし二つかな 占魚
蕗の薹ころがるごとく芽をもたげ 占魚