半蔀を上げてお茶屋や山櫻
今一つ中のお茶屋や山櫻
石段を上り下りの智恵詣
虻落ちてもがけば丁子香るなり
おもむろに窓に入り来る柳絮かな
大空にあらはれ来る柳絮かな
草焼くや迷へる人に立つ仏
瀬の石に立てば春水にぎやかに
琴坂の左右や春水迸る
栞して山家集あり西行忌
竹籬にかかり連る落椿
半日を提げし土産のさくらもち
春灯の下に我あり汝あり
谷深く尚わたり居る落花かな
春潮といへば必ず門司を思ふ
蕗の薹の舌を逃げゆくにがさかな
東より春は来ると植ゑし梅
植木屋の掘りかけてある梅一樹
紅梅の紅の通へる幹ならん
沖の方曇り来れば春の雷
蜥蜴以下啓蟄の虫くさぐさなり
大試験山の如くに控へたり