和歌と俳句

紅梅

紅梅に立ち去り難き一人あり 虚子

紅梅の紅の通へる幹ならん 虚子

紅梅の莟は固し言はず 虚子

紅梅や高みより見ゆ門の内 泊雲

一本の紅梅を愛で年を経たり 青邨

茂吉
近眼なる眼鏡をはづしくれなゐの梅をし見れば大きかりけり

茂吉
いにしへの聖も愛でしくれなゐの濃染のうめや散りがたにして

紅梅の老樹うるほふ風雨かな かな女

紅梅に白い瀬音がひびいてゐる 草城

そのままに君紅梅の下に立て 虚子

紅梅の枝ながながと人の前 青邨

紅梅の散る屋根龍泉寺町なりし かな女

語りつつ歩々紅梅に歩み寄る 虚子

黒き帯しめて紅梅の下にあり 青邨

紅梅や佳き墨おろす墨の香と 秋櫻子

枝垂れ枝の八重紅梅の裏表 汀女

紅梅に照り沈む日の大いなる 石鼎

降るものの雪の中なる薄紅梅 石鼎

降るものの中に雪見え薄紅梅 石鼎

紅梅の雪に天猫宝珠釜 石鼎

紅梅を老の光のつつみたる 耕衣

山裾の日に紅梅の盛り過ぎ 汀女

紅梅の残りし花に一茶亭 たかし

紅梅に薄紅梅色重ね 虚子

紅梅に彳ちて美し人の老 風生

夕昏れて紅梅ことにさけるみゆ 蛇笏

月光に花梅の紅触るるらし 蛇笏

紅梅の月の絹暈著る夜かな たかし

紅梅の濡れそぼつのみ阿波の雪 たかし

紅梅や旅人我になつかしく 虚子

乳牛は臥て紅梅の二三りん 蛇笏