和歌と俳句

高浜虚子

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我宿は巴里外れの春の月

三人の旅の親子に春の月

欠伸すぐ唄になりけり花の茶屋

箸で食うふ花の弁当来て見よや

ベルギーは山なき国やチューリップ

踏みて直ぐデージーの花起き上る

春風や柱像屋根を支へたる

折からの夜宴の花やライラック

夜話遂に句会となりぬリラの花

かりそめの情は仇よ春寒し

化粧して気分すぐれず春の風邪

客ありての軒端の茶の煙

御霊屋に枝垂梅あり君知るや

そのままに君紅梅の下に立て

雛の顔鼻無きがごとつるつると

折り折りて尚花多き宮椿

一枚の葉の凛として挿木かな

雨晴れておほどかなるや春の空

別荘を出て別荘への坂

畦を塗る鍬の光をかへしつつ

畦塗るや首をかしげて懇に

馬酔木折つて髪に翳せば昔めき