春風や柱像屋根を支へたる 虚子
春風にまぶたをそめてひときたり 彷徨子
春の風薄暮の月の幽かなる 草城
春風や古き港の中の関 野風呂
春風は吹きけり裏町に児等あふれ 鷹女
枯蔓を吹きほどきをる春の風 たかし
成らぬことをすぐにあきらめ春の風 風生
春風の柔かに吹く憂ひかな 風生
舌と歯に春風あたる眼をつむり 草田男
時刻ききて帰りゆく子や春の風 立子
春風の扉ひらけば南無阿弥陀仏 山頭火
白嶽は普陀落にして春の風 蛇笏
はんだいにへちま一つや春の風 万太郎
いと甘き菓子口に入れ春の風 万太郎
ふたりづつふたりづつ行く春の風 虚子
春風や離れの縁の小座蒲団 虚子
蛇籠の目大きくあらく春の風 占魚
ひとりぐらしになれて春風門に満つ 林火
我が作る田はこれこれと春の風 虚子
潮泡のつぶやきを聴く春の風 亞浪
枯蘆の笛鳴るといへ春の風 悌二郎
天に鳴る春風薪を割る男 林火
春風の心を人に頒たばや 虚子
子供下駄吊して売るや春の風 真砂女
材木のつまれ春風無尽なり 節子
春風や人表より裏より来 立子
美しく春の風吹く色に出で 立子
春の風ふり返らるる月日かな 万太郎
岡寺へ登り二丁や春の風 立子
春風に裏木戸開けて見て訪ひぬ 立子
九十五齢とは後生極楽春の風 風生