和歌と俳句

星野立子

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春光のあまねきときぞ吾も佛

岡寺へ登り二丁や春の風

春風に裏木戸開けて見て訪ひぬ

年寄りし姉をいたはり墓詣

春雷や辞しゆく妹に傘持たせ

今日は孫卒業の日よ何かせん

メモしつゝ早や四月よとひとりごと

蝶数多とび山の辺の道といふ

どの岩も石佛に見え春の山

耳成と畝傍濃淡

温泉の里は咲く谷の川ほとり

般若寺は蒲公英咲きて竹茂り

すかんぽや千体佛の間より

深山蝶深山つゝじにこもり飛び

すかんぽの見る間に刈られゆきにけり

ま横より仰ぐ大佛春の空

揖斐長良木曽川を率て春立ちぬ

夢の如きおぼろの富士に見えけり

幼稚園ひけどきの花の寺

白椿ばかり落ちゐし余所の墓

襟足を吹く風梅を散らすなり

蝶とんで櫻は色に出でにけり

摘みためし土筆意外に重かりし

山吹の一重ばかりよ歌碑古りぬ

土筆かなし摘み残されて狐色