和歌と俳句

星野立子

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草摘の籠が大きく大原路

昼餉終へ夢のごとくに遠干潟

母たのし汐干にあそぶ子を眺め

春水にとぎ水白くやがて消え

わが窓の灯の果の草朧

山吹のつき出し枝へ花はしり

学校へ行く子はゆきて梅の村

朝が昼に昼が夕と霞みつゝ

陶の如白玉椿咲き初めし

煎餅を犬がかむ音花の雨

ビロードの虻ビロードの白藤に

日に少しよひつゝ土筆摘んでをり

陽炎や道のまなかの大欅

このあたり畑も砂地や豆の花

墓参終へ空手桶さげ蝶さき立て

藤棚のさゝへ柱の三十余

夕方の明るき花に金鳳華

早春の松に烏や濃紫

薄氷の上を流るゝ水少し

吾も春の野に下りたてば紫に

満員の電車が通る縫うて

わが齢これよりと思ふ花に立つ

紙とんでゐしなはあらず仔猫かな

花を見て来しはさいぜん銀座歩す

を見てをり旅に出て見たく

春惜しむ心はやがて子の上に