和歌と俳句

星野立子

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や起きねばならぬ窓明り

たんぽぽの座につまづきて悲しけれ

こち向きて風雨の中の赤椿

花冷やひそひそ話耳につき

門前に自動車止り花の雨

や静かにわが身振返る

鶯や昼餉仕度は簡単に

草餅を頬ばりし時目が会ひぬ

椿咲き木蓮ふゝみ三崎よし

春雪のありしもいつか十日過ぎ

沙羅双樹春の朝日の庭散歩

芽柳や短かき枝の躍りやう

そよりともせぬ夜櫻に立ちゐたり

大風や暮春の庭を吹き暗らめ

おかまひは出来ねど庭の梅椿

大門をひらきて今日の雛の宿

春寒や護摩の火の今飴色に

鳥帰りゆく空晴れて風凪ぎて

啓蟄や脱ぎし羽織を濡縁に

咲きそめしや枝折戸新しく

涅槃の日心の友を訪ねばや

雨やみて色めき立てり花の山

院の庭残花見上げて父を恋ふ

働いて働いて来て春眠し

芝焼いてまこと賢き月出でぬ