和歌と俳句

暮春 暮の春

暮の春みな草臥て朝寝かな 千代女

いとはるゝ身をうらみ寐やくれの春 蕪村

寐仏を刻み仕舞ば春くれぬ 蕪村

返哥なき青女房やくれの春 蕪村

狩倉の矢来出来たり暮の春 召波

艸の葉も風癖ついて暮の春 一茶

雨になつて今年の春もくれにけり 虚子

酒を妻妻を酒にして春くるる 虚子

裏返す縞のずぼんや春暮るる 漱石

炭とりて反古籠にしてくるる春 虚子

春暮るる月の都に帰り行 漱石

晶子
くれの春隣すむ画師うつくしき今朝山吹に声わかかりし

晶子
病みてこもる山の御堂に春くれぬ今日文ながき絵筆とる君

病いへずうつうつとして春くるる 放哉

叡山を下りて母とふ暮の春 虚子

芥火に沈丁焦げぬ暮の春 蛇笏

いつか溜る文殻結ふや暮の春 漱石

何燃して天を焦すぞ暮の春 鬼城

亡き人の短尺かけて暮の春 鬼城

暮るるらむ春はさびしき法師にも 龍之介

われとわが睫毛見てあり暮るる春 龍之介

椿より蝙蝠出でて暮春かな 石鼎

人妻となりて暮春の襷かな 草城

花葱に暮春の靄や鴉啼く 麦南

数珠買ひに僧とつれだつ暮春かな 麦南

野蒜掘れば強きにほひや暮の春 たかし