和歌と俳句

原 石鼎

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焼野より光り揚れる雲雀かな

山風に岩あらはるゝ木の芽かな

朧夜の色つくり居るかな

笊の目につぶれつきゐし白魚かな

松影の這ひゐる月のつゝじかな

春惜む心に暗し牡丹の絵

月の野へ梅影落す庵かな

門の杉を越え戻る迅さかな

ものゝ根のなほいぶりゐる焼野かな

垣根より桜散りしく焼野かな

汀よりすぐの堤や下萌ゆる

鶯に春の流れの日もすがら

蘆の芽や雪かがやかに峰二つ

日の泥を現はす沼や蘆の角

校鈴に庭しづまるや百千鳥

山風に杉もまれゐるかな

庇とんで雀あらはや木の芽時

崖くづれ大空にある木の芽かな

藪深き竹の朽葉や落椿

や老樹亡ぼして枯るゝ藤

うらゝかや蜘蛛の糸と光るたこの糸

雛しまふ子に遠く来る歓喜あり

岩の根のあらはになりし汐干かな

春の鹿一声啼きし夕かな

東風吹くや障子の外の芝に音