頂上や殊に野菊の吹かれ居り
空山へ板一枚を荻の橋
山川に高浪も見し野分かな
鉞に裂く木ねばしや鵙の声
崖なりに路まがるなり曼珠沙華
葛引くや朽ちて落ちたる山筧
秋立つやひとひ日あたる山畑
秋晴や迫の奥なる藪の色
樵人に夕日なほある芒かな
谷底を一つ歩けり石たゝき
鶺鴒や谷のほとりのつぶれ藪
山萩の日に出て埃叩きけり
がちやがちやに山霧はるゝ旭かな
森にふむ杉の落葉や秋日和
女房も無くて身を古る音頭取
踊衆に軍酒振り舞ふや山頭
寺の扉の谷に響くや今朝の秋
釜敷に飯のこぼれや今朝の秋
秋とこそ山廬ゆさぶる夜半の風
山墓や燈籠ひくゝ賑かに
蜩や今日もをはらぬ山仕事
仲秋や土間に掛けたる山刀
馬の鼻芒は食はで行きにけり
山風を恐るる鶏や葛の秋
月うらとなる山越や露時雨