秋晴や枝うつりして森鴉
稲の穂のしみじみ若き月夜かな
大鐘に奈良は滅ぶる芒かな
コスモスの紅のみ咲いて嬉しけれ
秋の風芭蕉にふれて遅速あり
穂芒や門前横ぎる道ほとり
破れ案山子稲にうつむき倒れ居り
雁はれや添へ竹立てゝ雁来紅
芋の葉の縁から上や秋の空
無花果の裂けていよいよ天気かな
秋晴や杉に衣干す手が見ゆる
夜は日の出昼は月の出の鳴子かな
野分跡の水に微動や散り浮く葉
戸の口にすりつぱ赤し雁の秋
芋掘るや笠に弾ね来し土嬉し
コスモス見るや鼻に日当る顔向けて
秋晴や二階六畳下六畳
星を見て死ぬるわれかや籐寝椅子
欄握る水兵の手に秋の空
秋雨や群雀すでに松に倚る
虫の音にやみの輪いくつ秋の雨
倒木踏めば音笹にあり茸晴
色鳥に乾きてかろし松ふぐり
一つやめば二つ啼く虫庵夜寒
貼りかへて障子嬉しや栗の晴