秋蝶や犬よぶ人をめぐりとぶ
草高き垣根に太る南瓜かな
山ぎしを這はせて作る南瓜かな
本堂に消さで尚ある燈籠かな
大風の日の朝顔に七面鳥
提灯の灯の輪に霧や馬で発つ
荷をおろす馬にともすや露の秋
踞して友の額に微光や虫を聞く
ほそぼそとまた二ところ庵の虫
腰かけて框に人や茶屋夜長
首のべて日を見る雁や蘆の中
秋風やこころに一つ冷えしもの
蜻蛉や隔心の門出て一人
夜見が浜も由比が浜も同じ蜻蛉かな
とんぼうの薄羽ならしゝ虚空かな
秋晴やあるかなきかに住める杣
秋晴や墓地をたのめの茶屋二軒
秋晴や蘆に交りて枯るゝ草
けふの日の茸山はあり月の暈
菊剪るや燭燦爛と人にあり
提灯に躍り出る影や門の菊
剪りとつて灯下に赤し菊二本
洞深くさし込む日ある芒かな
雨去るやまた一しきり柳散る
ふりむけば頬擦る草あり山の秋