和歌と俳句

原 石鼎

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秋蝶や犬よぶ人をめぐりとぶ

草高き垣根に太る南瓜かな

山ぎしを這はせて作る南瓜かな

本堂に消さで尚ある燈籠かな

大風の日の朝顔に七面鳥

提灯の灯の輪に霧や馬で発つ

荷をおろす馬にともすや露の秋

踞して友の額に微光や虫を聞く

ほそぼそとまた二ところ庵の

腰かけて框に人や茶屋夜長

首のべて日を見るや蘆の中

秋風やこころに一つ冷えしもの

蜻蛉や隔心の門出て一人

夜見が浜も由比が浜も同じ蜻蛉かな

とんぼうの薄羽ならしゝ虚空かな

秋晴やあるかなきかに住める杣

秋晴や墓地をたのめの茶屋二軒

秋晴や蘆に交りて枯るゝ草

けふの日の茸山はあり月の暈

剪るや燭燦爛と人にあり

提灯に躍り出る影や門の菊

剪りとつて灯下に赤し菊二本

洞深くさし込む日あるかな

雨去るやまた一しきり柳散る

ふりむけば頬擦る草あり山の秋