筏木の皆巌摺れや草萌ゆる
下萌や青縞もちて磧石
我前に襞落つ富士や下萌ゆる
鶯や高原かけて日が当る
母の雛最も古りて清くあり
上野下りし我に日暮れぬ雛の店
ぬくぬくと老いてねむれる田螺かな
薄泥をかむりて老いし田螺かな
お彼岸のすから啼き居る鴉かな
彼岸会のお日のくもりもありがたや
彼岸会を燃えて居るなり大香炉
戸口より尾をひろげ入る燕かな
土塊に燕とまれば紫紺かな
曇り来る日のうるほひや木の芽ぐみ
午近き日の色見ゆる木の芽かな
枝の芽に星光り出し霞かな
峰の雲雲ととけあひかすむかな
石はみなわれて芽近き枯木かな
春暁の一枝に来し日影かな
朧夜の我家に見たり人の家
熱なくて病あやしき朧かな
お神輿の荒れて過ぎたる柳かな
神輿荒れもみにもみたる柳かな
蛙子の風ある方へ泳ぎけり
湧く水を遠く過りぬ蛙の子