和歌と俳句

原 石鼎

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鶯のふりかぶりけり春の雪

蓬生にみつる光や山笑ふ

恵那笑へば相つれて嶺々皆笑ふ

笑ふ山波のひまより見えかくれ

積む雪のほとほとこぼれ木の芽かな

椿垣道に従ひ東にも

折りとりし椿それにも陽炎へる

春陰やねむる田螺の一ゆるぎ

入学や山河越え来し夢を現

木蓮の一ひら風に動くかな

春暁のいかにして覚めし雀かな

鶯の日ねもす啼いて春の月

四五寸の梅木に花や春の月

種を置く土濃さや花曇

蒔く種のあかきこまかき養花天

物皆にあはき光や養花天

大松に幾十百の雀の子

産安の神の御森や松の花

行春の塩竃様は我のもの

塩竃の神へ潮満つ松の花

苗代の乏しく見えて故郷かな

市に得しの花の小さき紅

夜ふけより雨音きこゆ弥生尽

早春の深雪を踏んで訪はれけり

早春や深雪のコート濃紫