和歌と俳句

春の雪

篁も藁家もとけぬ春の雪 秋櫻子

淡雪の舞ひ戯ぶるる垣穂かな 風生

淡雪やかりそめにさす女傘 草城

水に浮く柄杓の上の春の雪 虚子

やはやはと降りてつもりぬ春の雪 淡路女

目の前に大きく降るよ春の雪 立子

くぐり見る松が根高し春の雪 久女

鶯のふりかぶりけり春の雪 石鼎

いちさきにつもる枝見よ春の雪 石鼎

枝先に雫してをり春の雪 立子

春雪に面あぐれば鷹が峯 普羅

からし菜に直ぐ積りけり春の雪 普羅

堆くつまれよごれぬ春の雪 立子

石から草の葉の淡雪 山頭火

こころなぐさまない春雪やあるいてもあるいても 山頭火

ぶらぶらあるけば淡雪ところどころ 山頭火

雑草はうつくしい淡雪 山頭火

雪へ雪ふる春の雪 山頭火

わらやねしづくするあわゆき 山頭火

春の雪木津の竹藪ぬらしけり 普羅

うたゝ寝の覚めて降りゐし春の雪 石鼎

春雪や鶴棲みて舞ふ和歌の浦 石鼎

淡雪に一点ぬれぬ凧の紅 石鼎

あは雪やわが心鏡に映るもの 石鼎

地階の灯春の雪ふる樹のもとに 汀女

茂吉
春の雪上ノ山の裏の山に降り小雀のこゑはしきりに聞こゆ

淡雪や妻がゐぬ日の蒸し鰈 亞浪

雪を割る人にもつもり春の雪 普羅

ゆらゆらと大満月や春の雪 石鼎

あか穂枝をいだかひ降れるも春の雪 石鼎

芽の木とて楓ばかりや春の雪 石鼎

中空に渦巻きもして春の雪 石鼎

双子山の裏も表も春の雪 かな女

春の雪岩石園にやんでをり 万太郎

山裾に寄せある柴や春の雪 たかし

建増の二階あかるし春の雪 万太郎

剥きかけしままの蜜柑や春の雪 万太郎

縫ふものに尺八の袋や春の雪 石鼎

鯉を画き水をゑがくや春の雪 石鼎

大粒の杉の雫や春の雪 淡路女

観世音念じ黝き春雪に かな女

春の雪幾日を敷きて汚れなし 秋櫻子

春雪を来し護謨靴に画廊踏む 誓子

窓枠に煤ころげころげ春の雪 立子

降りやまんとして卍する春の雪 石鼎

暁に降り暁にやみけり春の雪 石鼎

窓ちかく来て巴すも春の雪 石鼎

カーテンの隙に大きな春の雪 みどり女

春の雪ぼたとショールに花より大 風生

春の雪波の如くに塀をこゆ 素十

いつしかや手のあたたかく春の雪 汀女

春雪の夜に熱の子まかせおき 汀女

燈ぼてりの頬にさだかや春の雪 林火

春雪の鉄の兜を卓に置き 楸邨