猫の恋隈なく月の照つてをり
雛かざるなかに髪結来りけり
初ひひなみにゆく桃をかひにけり
春の雪岩石園にやんでをり
春の水遠く水銹にうもれをり
彼岸道いま踏切のあきしかな
蓮いけにふる春の雨佇ちてあり
木の芽晴すこし曇りて来りけり
月すでに上りてゐたる木の芽かな
陽炎や干潟づたひに一里ほど
大風のなかに蒲公英咲けるかな
仁王門長閑に人を通しをり
連翹に落花の風のいたりけり
庭ざくら連翹もつれ咲きにけり
連翹やたそがれそめし一ところ
花の山ゆめみてふかきねむりかな
花の雨竹のはやしのあかるしや
花の雨けさ瀬の音の遠のける
花曇鶯笛をふいてをり
縁先に見えていとしも遅ざくら
春惜む瀧の音どもきこえけり
くれそめて櫻としりし春惜む
春色やオールドパーの半ばほど
猫の恋火入りの月をおもふかな
冬にまたもどりし風や白魚鍋