よせ鍋の慈姑が好きや春の雪
春雨や浮間が原の昼のほど
永き日のやや風だちて曇りけり
風見えて朧の庭の広さかな
天麩羅をあげる仕度や花曇
灰神楽あげし掃除や花ぐもり
たちぎれになりし線香や花ぐもり
ふきあげの音ある庭や花ぐもり
屋根屋根の隙ある隅田や花曇
ゆく春やけふも花屋の早仕舞
暮れゆくや浮びて遠き春の雲
麗かにしるす参宮日記かな
麗かや紙の細工の汽車電車
麗かや枳殻垣と捨車
春浅き日ざしかげりし畳かな
屋根屋根を餘寒の雨の濡らしけり
春浅き鈍な剪刀をつかひけり
霜除に乾かぬ雨や春浅し
白足袋の爪先さむき梅見かな
新参や隣屋敷の夕ざくら
ゆく春やありのすさびのものおもひ
木瓜さくや遠く雑木とうちまじり
春月の赤きが枝にかかりけり
したたかに水をうちたる夕ざくら
宵浅くふりいでし雨のさくらかな
まなかひを離れぬ蝶や夏隣
ふりくらす雨ひえびえと躑躅かな
しばらくは桃のさかりを春の暮