和歌と俳句

杉田久女

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や螺鈿古りたる小衝立

舳先細くそりて湖舟や春の雪

縁起図絵よむ一行にさかり

春雪に四五寸青し木賊の芽

すすぐ一枚岩のありにけり

梅林のそぞろ歩きや筧鳴る

春潮に群れ飛ぶ鴎縦横に

春雷や俄に変る洋の色

逆潮をのりきる船や瀬戸の

春寒に銀屏ひきよせ語りけり

春浅く火酒したたらす紅茶かな

梨畠の朧をくねる径かな

くぐり見る松が根高し春の雪

ぬかづいてねぎごと長し花の雨

ぬかづきし我に春光尽天地

春光に躍り出し芽の一列に

春惜む布団の上の寝起かな

佇めば春の潮鳴る舳先かな

春潮に流るる藻あり矢の如く

春の山暮れて温泉の灯またたけり

春の襟染めて着初めしこの袷

灌沐の浄法身を拝しける