和歌と俳句

臼田亞浪

春寒の竹さわがしくなる夜かな

山桜白きが上の月夜かな

ほくほくと馬がおり来る山桜

淡雪や妻がゐぬ日の蒸し鰈

雛の節雲ひかひかとゆきにけり

花片の一と筋になり流れけり

空まろくかかり木々の芽やはらかし

昼深く野霞屋根に寄ゐけり

はくれむの翳をかさねて日に対ぬ

かすみ来ぬ芽の疾きおそき楢櫟

木蓮に風雨の声の昏くなる

うつつつと雨のはくれむ瓣をとづ

はくれむのひたすら白く夜にありぬ

日高しやおのづとけぶる松花粉

ゆく春の夜の迅雷の躬にふるふ

さくら咲き常磐木ふかき彩そふる

非時の雪はくれむすでに錆ふかき

子雀の声切々と日は昏し

立春の朝霧しづる枯枝かな

雛仕舞ふ朝を雪吹く廂かな

啓蟄の虫におどろく縁の上

ちちこ草ははこ草野川温みたり

花散らふ夕風寒し山を前

しじみ花雪のごとくに朝は冷ゆ