春寒の竹さわがしくなる夜かな
山桜白きが上の月夜かな
ほくほくと馬がおり来る山桜
淡雪や妻がゐぬ日の蒸し鰈
雛の節雲ひかひかとゆきにけり
花片の一と筋になり流れけり
空まろくかかり木々の芽やはらかし
昼深く野霞屋根に寄ゐけり
はくれむの翳をかさねて日に対ぬ
かすみ来ぬ芽の疾きおそき楢櫟
木蓮に風雨の声の昏くなる
うつつつと雨のはくれむ瓣をとづ
はくれむのひたすら白く夜にありぬ
日高しやおのづとけぶる松花粉
ゆく春の夜の迅雷の躬にふるふ
さくら咲き常磐木ふかき彩そふる
非時の雪はくれむすでに錆ふかき
子雀の声切々と日は昏し
立春の朝霧しづる枯枝かな
雛仕舞ふ朝を雪吹く廂かな
啓蟄の虫におどろく縁の上
ちちこ草ははこ草野川温みたり
花散らふ夕風寒し山を前
しじみ花雪のごとくに朝は冷ゆ