和歌と俳句

原 石鼎

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仔をつれて鵯なきつる二月かな

啼きあうて鵯いとけなき二月かな

青木の実晴れてそれより雪解かな

椋群れて低木へ通ふ雪解かな

午過の日に日に野山雪解かな

ひるごろの日に日に野山雪解かな

真空より日当たる庵の雪解かな

椋鳥の低木へかよふ雪解かな

真夜ならず雪解なだれと思ひけり

ストーヴに仲春の気を見たりけり

暖かになりなば来んと思ひしに

ピアノ拭けばピアノ鳴る春の霙かな

雪ちらとまじへて春の霙かな

芝にさへ雫す春の霙かな

もろもろの木に降る春の霙かな

ゆらゆらと大満月や春の雪

あか穂枝をいだかひ降れるも春の雪

芽の木とて楓ばかりや春の雪

中空に渦巻きもして春の雪

煙突のけむりに東風としられけり

春雨や松の逆枝みなくろし

春の雨白に滴をつづりては

植うるべき木の実にあらむ土間の隅

谷ぐくを聞きつけて来し布子かな

谷ぐくや乾きし巌のわれはしり