和歌と俳句

原 石鼎

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春潮や浦ながの水沫さまざまに

春潮や浪ひけば吐く巌根水

春潮や冬にも見たる巌房藻

乳児匐はせてあそぶけびんや春の汐

ぎくぎくと乳のむあかごや春の汐

黄口や餌を顫ひ呼ぶ燕の巣

巣に戻る燕と見ればあいあいし

巣燕の眼をあげてゐる黒さかな

菜の花をあらはるるとき蝶白し

紫の風船玉を好む子よ

荷風船相かたまつて動きけり

春眠やながくほぐるる牡丹の芽

子負ひ子の椿手に春の眠りかな

行春や朽ちて葉にのる八重椿