蓋しやる盥の鯉や冴え返る
雨まじる雪と添ひちる梅のあり
鶯の初音ぞわたり八重椿
縫ふものに尺八の袋や春の雪
鯉を画き水をゑがくや春の雪
滝のひびをとくとくとして春の水
春の水岸へ岸へと夕かな
翼たためば美しかりし鳥も往ぬ
ほろほろと籬に顔見せ鳥帰る
乾田の上に羽ばたき鶴帰る
庵木の芽くぐりし鶫も帰りけり
子と親となほけじめして鳥帰る
桃林に迷へる鳥も帰りけり
ぐわんと譜すればぐわんとピアノや春の雨
のぼらずて見る頂や春の雨
春雨に草をこぼれし花片かな
春雨の地をながれ出る花片あり
うたた寝の頬にただむきや春の雨
田代掻く女どもやな寒からめ
幻を過ぐるやTango木の芽雨
暁雨に木の芽鶯かかはらず
赤き苞添うて芽はなつ楓かな
草芽見入るや木の芽の影をふりかぶり
一山の木の芽かはける夕かな