和歌と俳句

原 石鼎

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ものさしにこづくも春の氷柱かな

星一ついとちかく見え春めく夜

早春の木々に芽ぶかん心かな

早春やきそさらぎ新も十九日

早春やけふぞ庭見る五十日ぶり

春あさく来て居り庭にけふの雲

早春や大いなる鳥窓をすぐ

早春や二三度窓をあけてみる

早春を湧く煙かたち松の中

雪のこる屋根もすくなに日和かな

雪とくる日和を窓のいとまかな

残雪の上の日南の木影かな

窓にきて夜半いみじさや猫の恋

孕猫いたくよごれてねむり居り

春日猫いときよらかにねむり居り

こまやかにのどしろたへや春女猫

白たへの雪をあざむく春女猫

白妙の雪をわたりぬ猫の恋

耳かいてまたねむりけり孕み猫

孕み猫よごれほそるはうしろ脚

虻にさめてはまぶしみ寝ねぬ孕み猫

三だんに落ちし音あり猫の恋

夜半の地に二声ばかり猫の恋

恋猫にだいちの春をしりにけり

通ひ猫塀をまがらふ尾と脚と

青木の実かぶりのぞきぬ大牝猫

苔深く通へる猫に青木の実

庭に来て若き虎斑の春女猫