和歌と俳句

原 石鼎

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土筆野や眼にいつまでも面影の

土筆野や誰かわらへる声すなる

土筆野やはらばへば眼に見ゆるもの

色籠の底に穂みゆる土筆かな

春の雲色かはりつつながれけり

突風のふるはせすぎぬ梨の花

突風に人はしらじな梨の花

五瓣づつつぶらつぶらに梨の花

天や白き五瓣の梨の花

梨の花風雨そぼつも一景色

雨風にかくもあはさや梨の花

梨の花窓辺にちるもしかすがに

梨の花ちるとき嫩葉あかねざし

梨の花ちりまぎれつつ初若葉

ちりはてし梨の花柄や初若葉

戸ざすときふと星明し目に

まるめすてしほごよりたちしかな

や盲ひし心の扉にも来て

春暁や土間のひよこの鳴きやみし

春暁の日の来れば露光るなり

雨に来てどうだんつつじ葉ばかりな

行く春や心に置きてたもつもの

や庵ほのあけに間ある空

や松に日の来てあふぐ空