和歌と俳句

原 石鼎

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二月をかし八手柊とあせんぼと

雪のこる家のまはりとも思ひ臥す

家かげの永久なるところ雪のこる

ともすればわかれとぶ鳩春さむし

うら枯の句せし木々いま春さむみ

春ぬくきこころにそへり庭のもの

鳩すでに春さむけれど群れとべる

みだらにも着て衣はしき余寒かな

ゆかしさのほめく日ごろを余寒かな

あはれさはつどへるひととはる寒み

つどひゐてやさしき嬬の余寒かな

紅梅に日々ほし物の色かはり

寒紅と紅梅とけぢめなかりけり

流木のすれあたり過ぐ猫柳

岸に着いて舳ゆれをり猫柳

猫柳水と畑との間より

猫柳畑地のなかに池一つ

舷の内側に日や猫柳

この土手の両裾にあり猫柳

圧して来し日やがて西へ猫柳

炭斗にとぼしき炭や猫の恋

宝蔵に飼はれて白し春女猫

寝ねしままつと眉ひそめ春の猫

夜々巴す なんじらしろし うかれ猫

紅梅の猫白梅の猫を挑み逸す