和歌と俳句

余寒

鱧の皮水切りたらぬ余寒かな 龍之介

竹の根の土うち越せる余寒かな 龍之介

街路樹に仰ぐ日ふるふ余寒かな 蛇笏

白日の閑けさ覗く余寒かな 水巴

棚梨の莟青める余寒かな 龍之介

風船のからみし枝の餘寒かな 万太郎

庭ひそと餘寒の寺の手水鉢 波郷

やまぐにの古城にあそぶ余寒かな 蛇笏

温泉げむりに別府は磯の余寒かな 蛇笏

阿蘇の煙たなびく余寒日和かな 月二郎

奥山に大雪やある余寒かな 石鼎

揃はざる火鉢二つに余寒かな 久女

鳥の餌の草摘み出し余寒かな 久女

みだらにも着て衣はしき余寒かな 石鼎

ゆかしさのほめく日ごろを余寒かな 石鼎

つどひゐてやさしき嬬の余寒かな 石鼎

朝光に睫毛のながき余寒かな 草城

ゆふやけの藁塚そむる餘寒かな 万太郎

鎌月も星も青みて余寒かな 石鼎

いよよ闌けしみかんを食うて余寒かな 石鼎

奥山に大雪やある余寒かな 石鼎

沖かけて波のわきたつ餘寒かな 万太郎

干柿のなまなかあまき餘寒かな 万太郎

一点の雲のそそげる余寒かな 普羅

焼けあとの一年たちし餘寒かな 万太郎

いそまきのしのびわさびの餘寒かな 万太郎

みゆるときみえわかぬとき星餘寒 万太郎

一ところ山に雲なき餘寒かな 万太郎

牛乳にりんごに日々の余寒かな 石鼎

白足袋の餘寒の白さ穿きにけり 万太郎

膝なでて餘寒しづかに老いしとよ 万太郎

火をふいて灰まひたたす餘寒かな 万太郎

気のいらち心の尖り餘寒かな 万太郎

羊羹を切る包丁の刃の餘寒 万太郎

万両の餘寒の古實古庭に 爽雨

ゆるされし五勺のさけの餘寒かな 万太郎

上根岸低みのままの余寒裡に 草田男

あれこれと心づもりの餘寒かな 万太郎

酒やめて酒の功徳の餘寒かな 万太郎

このあたり維新のころの寺餘寒 万太郎

ゼラニュームひそむ餘寒のつぼみかな 万太郎

立枯の木空余寒の雲とざす 悌二郎