烏わたり鵯なき二月日和かな
鶲来て逃げし庭なりきそさらぎ
牛乳にりんごに日々の余寒かな
白梅も淡紅梅も日日に散り
大木と見えてさながら畑の梅
白梅は白し添へる木は淡紅梅
鳴きわたる鶯も枝も雨の中
雛祭る心は外の面見ることか
雛すむや女の声の南より
雛すむ日白米を得し妻なりき
深き浅き底に日当り水温む
春意ほのと夕べに近き雨の音
燕飛ぶ空とおもひぬ雨ながら
雲際に燕や遠し檐高く
大方の木の目に萌えて日和かな
女とは妻なり弥生厨事
このごろの庵木に殖えし雀の子
鵯は神なり仄と衣更着
哀れなる妻と思ひぬ衣更着
初午の黄昏れし燈を点しけり
片富士の雪解の富士へ翔ける雲
残雪の解け行く潮へ降る雪よ
公魚を焼くとて砂糖醤油かな
白梅のうす緑して花盛り
梅が枝を染めて零るる朝日影