和歌と俳句

原 石鼎

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烏わたり鵯なき二月日和かな

鶲来て逃げし庭なりきそさらぎ

牛乳にりんごに日々の余寒かな

白梅も淡紅梅も日日に散り

大木と見えてさながら畑の梅

白梅は白し添へる木は淡紅梅

鳴きわたるも枝も雨の中

雛祭る心は外の面見ることか

雛すむや女の声の南より

雛すむ日白米を得し妻なりき

深き浅き底に日当り水温む

春意ほのと夕べに近き雨の音

飛ぶ空とおもひぬ雨ながら

雲際にや遠し檐高く

大方の木の目に萌えて日和かな

女とは妻なり弥生厨事

このごろの庵木に殖えし雀の子

鵯は神なり仄と衣更着

哀れなる妻と思ひぬ衣更着

初午の黄昏れし燈を点しけり

片富士の雪解の富士へ翔ける雲

残雪の解け行く潮へ降る雪よ

公魚を焼くとて砂糖醤油かな

白梅のうす緑して花盛り

梅が枝を染めて零るる朝日影