和歌と俳句

原 石鼎

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雨雫打つて白さよ梅の花

夕鐘や永劫に花白し

凍てし蝶日の白梅を翔び越えし

の眼の辺りなる庭掃除

急須垂らす音に似たるかな

雪達磨消えてしまうて下萌ゆる

若鶏に鶏冠出来初め下萌ゆる

出来たての飯に御碕若布炙りけり

埴土山姫埴土姫と雛祭り

子持鯊焼けあがりたり串の先

椹檜の葉先動かし木の芽雨

袖垣へ若鳥のぼり木の芽雨

碧空や諸ろ諸ろの芽に朝日影

青空を白雲走る木の芽かな

夕陽ひそと木の芽を染めて居たりけり

鵯の声移り鳴きする木の芽かな

臼になる幹ばかりなる森樹の芽

四五人の漁夫等立てり鰊群来

一枝を山の上より山椿

梳き櫛の抜け毛抜きある弥生かな

春暁の明星二つ並びけり

本堂の開け放たれて灌仏会

緑錆の梵鐘響き仏生会

油炒りする音八十八夜かな

鵯去つて枝にほのめく春の星