和歌と俳句

原 石鼎

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ややぬるむ雨をよぎりし鷹一つ

鵯の尾のずぶぬれてとぶ雨水かな

昼の枝雨水のしづくちりばめて

二三羽の鵯に雨水の枯木かな

雫してとぶ鵯の尾の雨水かな

鵯とんで幹をよぎりし雨水かな

凧の空炭ひく音と暮れにけり

ぬか雨に屋根濡れすずろかよふ猫

大木としもあらねども畑の梅

うす紅梅大きくなるにつれて咲く

あきらけく大樹芽はなち神の森

しめやかな幹して芽ぐむ大樹あり

大樹ほど遅き木の芽の深山かな

横長き白き芽をもち深山の木

雨ふくむ葉の重みして若楓

地よりわくしなだま乙女椿かな

春ひめのたまとりをとめつばきかも

大霞水天彷彿たるあたりより

はだら霜見えてあかつき霞むなど

春昼や鶯四五羽来てぐぜる

鳶の輪のふたまわりしつ花の谷

石にねて耳かく猫や花曇

ましろなる鳩一羽翔く養花天