灌仏や皺手合する珠数の音 芭蕉
麦飯や母にたかせて仏生会 其角
潅仏や蔦の若葉もあゆみそめ 千代女
葉に成し木は何思ふ仏生会 千代女
灌仏や運慶閑に刻けん 召波
灌仏やわらぢも許す堂の櫞 召波
潅仏や芍薬園を見すかして 白雄
潅仏や門を出れば茶の木原 白雄
灌仏や仮リに刻し小刀目 太祇
新茶煮る暁おきや仏生会 太祇
散けしの中に生るゝ仏かな 青蘿
灌仏の御指の先や暮の月 一茶
浜風に色の黒さよたん生仏 一茶
子規
げんげんもつつじも時と咲きいでて佛生るる日に逢はんとや
子規
古寺のつつじ見にとて来し我ぞ佛生るる日には逢ひける
げんげんの下で仏は生れけり 子規
山寺の障子締めあり仏生会 虚子
晶子
菜の花の御寺も桃のおん堂も仏うまるる人まうでかな
茂吉
み佛の生れましの日と玉蓮をさな朱の葉池に浮くらし
灌仏や美しと見る僧の袈裟 放哉
眉描いて来し白犬や仏生会 茅舎
灌仏や鳶の子笛を吹きならふ 茅舎
灌仏会御僧ひとり端居ます 烏頭子
潅仏の横向いてゐる夕日かな 水巴
ぬかづけばわれも善女や仏生会 久女
無憂華の木蔭はいづこ仏生会 久女
釈迦生れぬ浄飯王は朱の椅子に 槐太
灌仏の人の中なる柱かな 花蓑
夕空のはなやかになりぬ仏生会 草城
潅仏のお寺の庭に手毬つき みどり女
堂前の大山桜灌仏会 立子
灌仏の肩がかわくにいくたびも 梵
本堂の開け放たれて灌仏会 石鼎
緑錆の梵鐘響き仏生会 石鼎
仏母たりとも女人は悲し灌仏会 多佳子
はらはらと真昼の雨や佛生会 汀女
誕生佛百禽鳴いて厨子をいづ 秋櫻子
誕生佛螺髪ひた濡れたまひけり 秋櫻子
どしや降りに落花ただよふ佛生会 林火
釈迦牟尼の産湯濁りて止むを得ず 青畝
仏生会くぬぎは花を懸けつらね 波郷
佛生会一村こぞりてんと花 林火
人無きに灌佛濡れて居給へり 秋櫻子
灌佛や生老病死減ることなし 青畝