春寒やお蝋流るる苔の上
春寒やお滝様とて竹の奥
暖や飴の中から桃太郎
麗かや砂糖を掬くふ散蓮華
麗かや松を離るる鳶の笛
春暁や先づ釈迦牟尼に茶湯して
春暁や音もたてずに牡丹雪
春昼や人形を愛づる観世音
春宵や光輝く菓子の塔
春の夜や寝れば恋しき観世音
春の夜の秋より長し草の庵
行春や茶屋になりたる女人堂
九品仏迄てくてくと春惜む
子守沙弥心経うたふおぼろかな
朧夜の塔のほとりに影法師
骨壷をいだいて春の天が下
春天に鳩をあげたる伽藍かな
又立ちし鳩の羽音や花曇
春雷や牡丹の蕾まつ蒼に
春泥に子等のちんぽこならびけり
涅槃会に吟じて花鳥諷詠詩
眉描いて来し白犬や仏生会
甘茶仏杓にぎはしくこけたまふ
灌仏や鳶の子笛を吹きならふ
御本山二十重の畦を塗りかたむ