初午や馬込池上犬殖えて
御僧や今朝さへづりの揶揄に覚め
草庵の足らず事足る目刺かな
世捨人目刺焼く瓦斯ひねりたる
梅の軒いと丹念に柑皮干す
死相ふとつらつら椿手鏡に
沈丁や死相あらはれ死相きえ
蛙聞く微熱の髪膚夜気に触れ
初蛙きりころ遠く近くかな
玉津島袴わすれし東風の禰宜
塩竃に春曙のお蝋かな
母の忌の御空の春の雲仰ぐ
春の雲眺めひねもす玻璃戸中
草餅のやはらかしとて涙ぐみ
春月の輪を袈裟掛や梵字松
梵字松奏でそめたるおぼろかな
梵字松春月覗く葉越かな
焼林檎余りに美味で春の夜で
天心に光りいきづくおぼろかな
咳苦し朧よし寝もねらめやも
草餅や御母マリヤ観世音
たらちねのつまめばゆがむ草の餅
今年はやこの草餅をむざとたべ
とこしへの病躯なれども青き踏む
青き踏み棹さす杖の我進む
青き踏む叢雲踏むがごとくなり
青き踏む今日この国土忘れめや