和歌と俳句

川端茅舎

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

麦秋や葛西六郎墓移転

金魚玉三階の軒に吊しけり

松原をはなれし道や土用波

山門の前の茶店のコレラかな

題目を唱へて死ぬるコレラかな

甘酒や土手からのぞく長命寺

絶壁の上の芝生や雲の峰

草の戸の真昼の三昧や花柘榴

舟蟲と遊べる蟹の横目かな

ガタ馬車のべらべら幌や麦の秋

麦秋や古墳の如き瓦竃

青嵐や芒の中の花薊

薫風や畳替へたる詩仙堂

月涼し僧も四条へ小買物

金銀の光涼しき薬かな

白日のいかづち近くなりにけり

蝶の羽のどつと流るる雷雨かな

迎火や風の葎のかげによせ

迎火や露の草葉に燃えうつり

迎鐘ひくうしろより出る手かな

からくりの鉦うつ僧や閻魔堂

閻王や蒟蒻そなふ山のごと

御宝前のりだし給ふ閻魔かな

蒟蒻に切火たばしる閻魔かな