川端茅舎
蛍火の鋭どき杭ぜ燃やしけり
蛍火に幻の手を差し出しぬ
桟橋の先にも菖蒲葺き垂れし
馬鹿家鴨流れて早苗矢のごとし
鯉幟ポプラは雲を呼びにけり
胡瓜もみ蛙の匂ひしてあはれ
ほととぎす山家も薔薇の垣を結ふ
紅薔薇に棕櫚蓑を捨ててあり
温泉に沈み一寸法師明易き
雷雨過ぎ大気冷たく空薔薇色
緋の衣すてたる芥子は鉄十字
我が魂のごとく朴咲き病よし
天が下朴の花咲く下に臥す
朴の花白き心印青天に
朴の花猶青雲の志
父が待ちし我が待ちし朴咲きにけり
朴の花眺めて名菓淡雪あり
朴散華即ちしれぬ行方かな
洞然と雷聞きて未だ生きて
夏痩せて腕は鉄棒より重し
石枕してわれ蝉か泣き時雨