和歌と俳句

川端茅舎

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蛍火の鋭どき杭ぜ燃やしけり

蛍火に幻の手を差し出しぬ

桟橋の先にも菖蒲葺き垂れし

馬鹿家鴨流れて早苗矢のごとし

鯉幟ポプラは雲を呼びにけり

胡瓜もみ蛙の匂ひしてあはれ

ほととぎす山家も薔薇の垣を結ふ

紅薔薇に棕櫚蓑を捨ててあり

温泉に沈み一寸法師明易き

雷雨過ぎ大気冷たく空薔薇色

緋の衣すてたる芥子は鉄十字

我が魂のごとく咲き病よし

天が下朴の花咲く下に臥す

朴の花白き心印青天に

朴の花猶青雲の志

父が待ちし我が待ちし朴咲きにけり

朴の花眺めて名菓淡雪あり

朴散華即ちしれぬ行方かな

洞然と聞きて未だ生きて

夏痩せて腕は鉄棒より重し

石枕してわれ蝉か泣き時雨