白秋
日は麗ら 薔薇あまりに 色紅し わつと泣かむと 思へどもわれ
白秋
大きなる 紅薔薇の花 ゆくりなく ぱつと真紅に ひらきけるかも
白秋
風くれば 薔薇はたちまち 火となれり 躍りあがるらむ うれしき風に
白秋
驚きてわが身も光るばかりかな大きなる薔薇の花照りかへる
白秋
午過ぎてますます紅き薔薇の花ますます重く傾きゆくも
白秋
大きなる何事もなき薔薇の花ふとのはずみにくづれけるかも
晶子
わが君に恋のかさなる身のごとし白き薔薇も紅きさうびも
朝焼おそき旦薔薇は散りそめぬ 山頭火
初夏の空の光に従ひて恋のこころの花さうび咲く 晶子
汽車すぎしあと薔薇がまぶしく咲いてゐたり 山頭火
薔薇剪りに出る青空の谺 碧梧桐
散る薔薇に下り立ちて蜂吹かれけり 水巴
晶子
白くして火よりも熱き香を放つ薔薇を皐月がかたはらに置く
晶子
夕闇に透かし見るなり薔薇の花いまだ生れぬ世界のごとく
晶子
むさし野の蒲田の薔薇の園を行く夕闇どきの水の音かな
晶子
山川の岩にかかれる白波のさましておつる夕ぐれの薔薇
晶子
逆しまに青き空をば抱く薔薇ルノワアルをば仰ぎたる薔薇
灯の色や指遊ばせて卓のばら みどり女
我庵の黄ばら見に来よ花盛り 石鼎
薔薇の花一片散りし四片かな 風生
晶子
金閣寺北山殿の林泉にいつ忍び入り咲ける野薔薇ぞ
利玄
鮮らしきばらの剪花朝園の鋏の音をきくここちする
龍之介
恋すればうら若ければかばかりに薔薇の香にもなみだするらむ
薔薇をけふも書きついで色の淋しく 碧梧桐
月の露光りつ消えつ薔薇の上 花蓑
ばらに降る雨とぎれけり起きて見る みどり女
ゆあみしてほのかに眠し薔薇匂ふ 草城
白日や少女提げたる薔薇の紅 草城